ビットコイン・インスティテュート

ジェド・マケーレブ (1975–)

マウントゴックスを作り、のちに採掘のいらないチェーンを二つ作った人

人物

暗い背景の図解。「CARD TRADING」と書かれた枠から、横線の並ぶ小さな表示板へ線が伸びている。ほかに、CONSENSUSと記されたノードの環と、その隣の打ち消しの印、2007年から2014年までの水平な時間軸があり、最下部には三つの説明の枠が並ぶ。

ジェド・マケーレブには、すでに、数百万人が同時に使うファイル共有のネットワークを作った実績があった。自身の会社MetaMachineが2000年に公開したeDonkey2000である。その後、カードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』のカードを取引するために、2007年にmtgox.comというドメインを買った。2010年7月18日、彼は使っていなかったこのドメインで、ビットコインの取引所を開いた。相場を示すサービスも備えていた。BitcoinTalkでの告知は3行とリンクだけだった。

ビットコインの最初の四年間、世間の人がビットコインについて知ることの大半は、このサイトを通じて伝わった。2013年から2014年にかけて、世界のビットコイン取引の70%を超える分が、ここで行われていた。2014年2月の破綻は、預かったコインが失われた事件として、ビットコインの記録に残る中で最大のものである。

破綻のとき、マケーレブはもう運営から離れていた。彼は2011年初頭にマルク・カルプレスへ売却した。ウィキペディアの、マケーレブ本人の記事は2月、取引所の記事は3月としており、このサイトには、どちらの月が正しいかを決める根拠がない。売ったあとも、少数株主として、取引所がなくなるまで株を持ち続けた。

2000MetaMachine 設立、eDonkey2000 公開2007カード取引用にmtgox.com を取得2010ビットコイン取引所として立ち上げ直す (7月18日)2011マルク・カルプレスへ売却、少数株主として残る後の XRP レジャーの開発を開始2012XRP レジャー公開、1,000 億 XRP を一度に生成2013リップルでの実務から離れる (7月)2014ステラ開発財団を共同設立 (7月31日)マウントゴックス破綻(2月)2019「金融機関の大半は使わない」 (1月2日)「解けるとは思っていなかった」(11月16日)

ホワイトペーパーを読んで変わったこと

マケーレブがビットコインを知ったときのことを語った言葉は、サトシが解いた問題が何だったかを、アルトコインの創設者の誰よりも短く言い当てている。

ジェド・マケーレブ(Forbesの取材、2019年11月16日)

あの論文を読むまで、私はその [二重支払いの] 問題が解けるとは思っていなかった。

これは、ただ褒めているのではない。「解ける」問題とはどういうものか、その線引きから考え直さなければならなかった、と認めているのだ。その後マケーレブが作ったものはすべて、サトシの解き方が正しいかどうかではなく、その解き方にかかる費用を問題にしている。

採掘を外すために作られた二つのチェーン

2011年、マケーレブは後にXRPレジャーとなるものの開発を始め、2014年にはジョイス・キムとステラ開発財団を共同で設立した。リップルを離れてステラを作ったこの動きは、XRPを最初に設計した3人(マケーレブ、デビッド・シュワルツ、アーサー・ブリット)が、それぞれ別の道へ進んだことを示している。ビットコインがデジタルゴールドと呼ばれる理由を、仕組みの面から論じた分析も、この3人が分かれた例として、この動きを挙げている。ビットコインでは、創設者が姿を消したので、創設者と仲間の意見が分かれることもなかった。どちらの設計も、プルーフ・オブ・ワークを、選ばれた検証者たちの間の合意に置き換えている。その理由を、マケーレブははっきり語っている。

ジェド・マケーレブ(Forbesの取材、2019年11月16日)

採掘なしで合意の問題を解けるなら、明らかにそのほうが良い状況だ。文字どおり何十億ドルもが採掘に費やされているのだから。

同時に、自分が手放した分散という性質には本当の価値があり、手放すには代償があったことも、はっきり認めている。

ジェド・マケーレブ(Forbesの取材、2019年11月16日)

ビットコインは明らかに極めて分散していて、旗を振って引っ張っていく中心の会社がない。それは本当にすばらしい形だが、同じものを作り直すのはとても難しい。

「同じものを作り直すのはとても難しい」という言い方に、この譲歩の正直さが表れている。ビットコインのあとに現れた、創設者が率いるチェーンは、分散がいらないと考えて捨てたのではない。その多くは、分散はねらって作り出せるものではない、と結論したのである。ビットコインの分散は、創設者がいない、事前の発行がない、運営する企業がない、という立ち上げのときの条件から生まれた。そうした条件は、わざと整えようとしていることが外から見えた時点で、もう成り立たない。12のチェーンの設計を比べた分析を見ると、創設者が率いるチェーンの多くで、同じ譲歩が繰り返されている。マケーレブが取り除いた採掘には費用がかかるが、その費用で実際に何が得られているのか。プルーフ・オブ・ワークとプルーフ・オブ・ステークを比べた分析は、採掘の費用を、代わりに置かれた検証者のリストや、ステーキングで担保として預けるコインと突き合わせて、それを測っている。

SEC対リップルの裁判記録には、この設計の狙いが、当事者の間に争いのない事実として載っている。裁判官が自分でまとめた要約の中の一文である。

(ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のSEC対リップル事件の命令、2023年7月13日)

彼らは、2009年に登場した最初のブロックチェーン台帳であるビットコインのブロックチェーンに対し、より速く、より安く、よりエネルギー効率の高い代替物を作ることを目指していた。……2012年にXRPレジャーが立ち上がったとき、そのソースコードは、1,000億XRPという決まった量の供給を生成した。

ビットコインと根本から違うのは、後半の一文である。ビットコインの供給は時間をかけて、仕事をした者へ発行される。XRPは、最初のブロックの時点で全量がすでに存在し、創設者たちの手にあった。発行量を固定する通貨と、発行量を調整できる通貨を比べた分析が扱うのは、いつどれだけ発行するかという計画のほうである。立ち上げの初日に誰がコインを持っているかという配分は、それとは別の問題である。そして、最初に全量を作っておくチェーンと、採掘で発行するチェーンとが最も大きく違うのは、発行の計画ではなく、この配分である。

XRPレジャーの今の公式文書は、採掘を何に置き換えたかを、ぼかさずに書いている。

(XRPレジャーの公式文書のFAQ)

プルーフ・オブ・ワーク (PoW) は、信頼できる第三者を必要とせずに二重支払いの問題を解いた最初の仕組みだった。XRPレジャーの合意形成の仕組みは、同じ問題を、はるかに速く、安く、エネルギー効率よく解く。

2014年のリップルの当初の技術文書は、同じ選択をエネルギーではなく遅延の議論として説明していた。すべてのノードが同期して通信しなければならない、という条件を、「全体として信頼されている部分ネットワーク」に頼ることで避けるという説明である。この説明の要は「信頼」という言葉で、設計はそのことを隠していない。

ビットコインが進まないと彼が考えた方向

マケーレブは、今読むと当時とは違って聞こえる予測も残している。

ジェド・マケーレブ(Yahoo Financeの取材、2019年1月2日)

金融機関の大半は、ビットコインを使うことにはならない。

銀行が決済の基盤としてビットコインを使う、という意味に限って読めば、これまでのところ、彼の予測は外れていない。機関による保有についての主張として読めば、2024年以降の現物上場投資信託や企業の準備資産としての保有は、逆の方向を示している。ネットワークを使うことと、資産として持つことは別である。ビットコイン自身の歴史で電子現金とデジタルゴールドを分けてきたのも、この違いだ。マケーレブの一文は、この二つを一緒くたにして読まない限り、誤りにはならない。

ビットコインの歴史での意味

マケーレブのような道を歩んだ人は、ほかにいない。初期のビットコインの取引の大半が通った取引所を作り、そのあと十年をかけて、その取引所が扱っていたビットコインの、仕組みそのものに代わるものを作り続けた。XRPレジャーもステラもビットコインのコードから派生していないので、ビットコインから分かれた通貨と、その周りの通貨の系譜には出てこない。マウントゴックスのほうはこの歴史に否応なく現れる。それを作った人物は、ビットコインを画期的な発明だと考え、同時に、それを土台に別のものを作る値打ちもあると考えた。そう考えた理由を、はっきりした言葉で残している。

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分析

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