ビットコイン・インスティテュート

ジェレミー・アレール (1971–)

Circle創業者、USDC、そして「国家に属さない貨幣」としてのビットコイン

人物

暗い背景の図解。RESERVEと書かれた円から矢印が伸び、ドル記号の入った青緑の円盤につながっている。そのほかに、片側に円盤、片側に四角を載せた小さな天秤、一度だけ大きく落ちてまた元に戻る横長の線、最下部に並ぶ三つの説明の枠がある

ジェレミー・アレールは、暗号資産に触れる前にすでに二度、インターネット企業の創業者だった。1995年に兄弟のJJアレールとAllaire Corporationを共同創業し、1999年に株式公開、2001年にMacromediaに買収されて同社の最高技術責任者になっている。その後Brightcoveを創業した。Circleはさらにその後で、2018年9月26日にUSD Coinを公開した。

アレールが作ったのは、規制を受けるドル連動通貨の中で最大のものである。ビットコインが目指したほぼすべての性質と、正反対の設計だ。その一方で彼は、ビットコインが大事なのは、まさに自分の製品にはない性質を持っているからだと、公の場で何度も述べてきた。

2018Circle が USD Coinを公開 (9月26日)2019「国家に属さない貨幣はより重要になる」(6月25日)デジタルゴールド論と資本規制に言及(8月20日)2021準備資産に CP と社債(7月時点の証明報告)準備を現金および現金同等物へ(9月)202333 億ドルが SVBに滞留、 連動が崩れる(3月)CENTRE 解散、 Circleが USDC を単独管理(8月)2024「もっとも重要な代替投資資産の一つ」(6月19日)

彼がビットコインについて語ったこと

ジェレミー・アレール(CNBCの取材、2019年6月25日)

ビットコインについての私の考えは、まさに、国家に属さない貨幣がこれからも広がり続け、その重みは下がるどころか、ますます増していく、というものだ。

より多くの人が、ビットコインのような検閲耐性のある、極めて安全なデジタル資産の価値を理解するようになる。

二か月後には、その価値を、市場の理屈ではなく、ビットコインを求める具体的な人々の話として語っている。

ジェレミー・アレール(CNBCの取材、2019年8月20日)

ビットコインのような国家に属さないデジタル資産が、自分で管理できる場所に資本を移したい人々にとって魅力的なのは、明らかだ。

それがデジタルゴールドという考え方だ。ビットコインを買い集めている機関も、個人も、そう考えていると思う。特に、資本規制を強く心配しなければならない国や環境にいる個人はそうだ。

ジェレミー・アレール(Benzingaの記事、2024年6月19日)

ビットコインそのものが、地球上でもっとも大きく重要な代替投資資産の一つになった。

どれも渋々の評価ではない。アルトコインの創設者によくある、ビットコインの過去をたたえておいて「もう役目は終わった」と言い出すための地ならしでもない。アレールの事業はビットコインの用途と競合していない。競合しているのは銀行送金である。

USDCは、わざとビットコインの逆を行く

CENTREの技術文書は、ドル連動通貨に取りうる四つの設計を挙げ、どれを選んだのかと、その代償を書いている。

(CENTREのホワイトペーパー)

CENTREが提供しようとするのは第一の方式、すなわち法定通貨担保型である。トークンにした法定通貨1単位の裏には、準備として持つ法定通貨1単位がある。法定通貨担保型は、ほかの方式にもまして、従来の規制の要件をきちんと満たさなければならない。発行する会員は、銀行に預けた法定通貨のような従来の裏付け資産を、監査に耐えるだけきちんと持っておかなければならない。分散の度合いも小さくなる。そして価格の安定という点では、現在もっとも堅牢な方式でもある。

これは、ビットコインの設計がはっきり退けた選択を、すっきり言い表した一節である。ビットコインは、発行主体も準備資産も償還の約束も持たない代わりに、検閲に強い。USDCは、その三つをすべて持つ代わりに、価格が安定している。技術文書も、そこをごまかしてはいない。

(CENTREのホワイトペーパー)

中央集権になるという代償に対して、CENTREが出した答えは、トークンを発行する会員が何社もいるネットワークである。そうすれば、担保を預かる発行元が一つだけで、そこが壊れれば全体が止まる、という形にならず、利用者は複数の準備資産と資金の供給源を使える。この手法は、拠点を複数に分けてはいるが、完全な分散をうたうものでも、それを目指すものでもない。

「拠点を複数に分けてはいるが、完全な分散をうたうものではない」という一文は、ドル連動通貨について書かれた文書の中でも、かなり誠実なものだ。同時にこの一文は、ビットコインがほかの資産と一番はっきり違う点を言い当てている。ビットコインは、発行する会社の資産や負債に支えられていない。デジタルゴールドとしてのビットコインの特徴も、この違いから出てくる(デジタルゴールドの構造的特徴)。

CENTREの技術文書が挙げたUSDCの使い道の一つは、ビットコインそのものに関わる。そしてこの使い道こそ、ドル連動通貨がこれほど急に広まった理由である。

(CENTREのホワイトペーパー)

ある投資家は、ビットコインの値動きから身を守るために、対応する取引所でビットコインを米ドルトークンに替えることができる。そうすれば、その米ドルトークンの価値は動かないと安心していられる。

設計が試された場面

USDCの歴史には、この選択が試された場面が三つある。三つともCircle自身が記録している。

局面試されたこと起きたこと
準備資産の中身 (2021年)公開時の「現金の準備に裏付けられる」という言葉が、本当に現金を指していたのか7月を対象とする証明報告は、現金および現金同等物61%、外国銀行の米ドル建て譲渡性預金13%、米国債12%、コマーシャルペーパー9%、社債5% と報告。Circleは同年9月に現金および現金同等物100% へ移した
シリコンバレー銀行 (2023年3月)準備資産に手が届くのか破綻したばかりの同行に33億ドル(全体の約8%)が置かれていた。預金が回収可能だと確認されるまで、USDCは1ドルを下回って取引された
CENTREの解散 (2023年8月)中央集権への異論に対して技術文書が用意した答えが、通用し続けるのかCircleとCoinbaseは共同事業体を解散し、CircleがUSDCの統治とスマートコントラクトの鍵を単独で握った。規制の明確化により独立した統治体は不要になった、というのが表明された理由である

表の最初の二行の論点は、ビットコインにはそもそも生じない。裏付けが何もないからである。この性質は、裏付けそのものが疑われる場面になるまでは弱点に見える。結局、USDCを救ったのも準備資産だった。Terra/Lunaは正反対の設計を選び、準備資産を一切持たないアルゴリズムで価格を保とうとした。その仕組みが逆に働き出すと、400億ドルが六日で消えた。USDCにとって最悪の週に起きたのは、準備資産が破綻した銀行に二日ほど閉じ込められたことだった。Terraにとっての最悪は、準備資産がそもそもなかったことである。

最高経営責任者自身の言葉が、この局面で試された原則を述べている。

ジェレミー・アレール(Circleの報道発表、2023年3月)

流通しているすべてのUSDCが信頼でき、安全で、1対1で償還できること。Circleにとって、これ以上に大切なことはない。

1ドルとの連動は、約束としては守られたが、価格の上では二日ほど崩れた。約束と価格のこの食い違いが、取引相手に頼ることの危険のすべてである。誰の約束にも頼らず、持っているだけで価値が成り立つ資産には、この危険がない。

そして、表の三行目の理由をどう見るにせよ、技術文書が中央集権への備えとして示した仕組みは、もう残っていない。今の設計は、技術文書が、こうはならないようにすると書いていた形そのものである。

ビットコインの歴史での意味

USDCはビットコインのフォークでも、通常の意味でのアルトコインでも、競合する貨幣設計でもない。ブロックチェーンで扱えるようにしたドルであり、その発行量は、間接的に、米連邦準備制度の裁量に従う。法定通貨に連動するドル連動通貨は、そのために、固定供給と自動調整の比較の中で、ほかの通貨とは別に扱われている。こうした通貨は、自分で発行の予定を決めず、発行する主体の裁量をそのまま受け継いでいる。

アレールの発言を記録に残す価値は、国家に属さない貨幣と、国家が支える貨幣の両方について、彼が矛盾なく語っている点にある。十二のチェーンの設計を比べた分析は、比べたチェーンの中で、両方の側を最もはっきり語った例として、この発言を挙げている。国家に属さない貨幣は重要で、これからもっと重要になる。同時に、国家が支えるものだと正直に名乗るトークンこそ、現実の決済の大半が必要としているものだ。この二つが両立するのは、それぞれ別の問題に答えているからである。同じ区別は、ビットコイン自身の歴史の中で、電子現金とデジタルゴールドを分けてきたものでもある。ドル連動通貨は、ビットコインが当初掲げた野心のうち、決済の部分を取り出し、規制された発行主体に渡した。これは分業である。それが同時に敗北でもあるのかどうか。アルトコインの記録全体が、この争点を論じ続けている。

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