ビットコイン・インスティテュート

サトシ・ナカモトは​本当に​日本人だったのか — プロフィール・言語・​時計

濃紺の地の図。「One profile, one country」の題の下に、「Satoshi Nakamoto、35、Male、Japan」と書かれ「Unverified」の印が押された金の枠のプロフィールのカードがあり、言語(イギリス式の綴り、セントで数えたお金)、時計(GMTとEST/CSTの二つの時計)、候補(日本人の候補一人)の三つの枠に線でつながる。下の帯は「Three checks against one claim」。

サトシ・ナカモトを日本人と呼ぶ根拠は、裏付けの取れない一つのプロフィールの一行に尽きる。記録の他の部分、すなわち言語、活動時刻、そして実際に日本人である唯一の候補は、すべてこの一つの主張と照合しなければならない。そして、その照合結果同士も一致しない。

1. 唯一の自己申告

P2P Foundationのプロフィールは、名前の下に3つの欄を出している。年齢、「Male(男性)」、「Japan(日本)」である。年齢は年ごとに一つずつ増え(2011年3月に35、2015年12月に40)、このプロフィールから広く伝えられている1975年4月5日生まれと合う。32か月分の書簡・フォーラム投稿・コードのどこにも、この3つを裏付ける記述は一度も現れない。サトシがそこでビットコインを告知した翌日、ミシェル・バウエンスはP2P Foundationの研究メーリングリストで同じ前提を、留保つきで口にしている。「あなたはそこを拠点にしていると思うのですが、もちろん間違っているかもしれません」。そのうえで、P2P Foundationのウィキに日本の取り組みを書き足してほしいと頼んだ。

自己言及一覧はサトシが自分自身を文の主語にした箇所をすべて洗い出し、同じ結論に達している。この3項目は「自称された身元情報」であり、出典はこのプロフィールのみで、サトシ自身の発言が確立していない事項として別に列挙されている。伝記も同じプロフィールを「未検証で、フィクションと広く見なされている」と記録する。

フィクションだからといって無意味なのではない。サトシが自分の年齢に数字を、自分の国に名前を当てたのは、後にも先にもこのプロフィールだけである。本稿の他の節はすべて、この一つの主張が検証を招いたからこそ存在する。

2. 四つの別々の論点

「サトシは日本人だったのか」という一つの疑問は、記録がそれぞれ別に答える四つの論点を一つに束ねている。

  • 国籍: プロフィールの主張がどの国籍に対応するのか。独立に確認・否定できる文書が存在しないため、検証不能。
  • 母語: サトシが何語で思考していたか。英文そのものから接近できる。
  • 活動地域: サトシが実際にどこから投稿・コミットしていたか、時刻単位で。タイムスタンプ分析から接近できる。別の角度からは、相手の挨拶が地理的な答えを誘う場面でサトシが何を答えなかったかからも接近できる。実際に記録されたある事例がそれを示している。
  • 候補者適合性: 実際に日本人である特定の実名候補者が、記録の他の部分と一致するか。該当する唯一の候補者から接近できる。

四つはそれぞれ別の証拠である。一つに反する記録があっても、残り三つに自動的には及ばない。

3. 言語

サトシの英語は、日本で教育を受けた書き手に典型的な英語とは読み味が違う。伝記は「イギリスまたはコモンウェルス圏の語法と整合する、流暢な英語」と記録する。Chain Bulletinの2020年の分析はさらに具体的で、イギリス式綴り(organise、colour、neighbour)とイギリスの口語表現「bloody」を、742件の活動記録と併せてロンドンの根拠として読む。

これが解決するのは母語という論点の一方向だけである。記録された散文のどこにも、日本語母語話者が第二言語として英語を書くときに現れる痕跡、すなわち語順のずれ、冠詞・前置詞パターン、日本語の概念をそのまま英訳したような言い回しが見当たらない。学術的な文脈からくだけたやり取り、メール、リリースノートまで幅のある32か月分の記録を通じて、この痕跡は一度も現れない。これは単発の兆候ではなく、大きく一貫した不在である。

同じ文章の中には、母語ではなく暮らしていた場所に関わる習慣もある。サトシはお金をセントで数えていた。ホワイトペーパーの「送金のすべてのセント」から、普段の額が0.01から1000に収まるようにコインの大きさを決めた2011年のメールまでそうであり、本人の文に円は一度も出てこない。日本では1953年を最後に1円未満の硬貨と紙幣がなくなっている。サトシが数えていた単位は、コード・手数料・メールまでを別のページで追っている。

4. 時計 — そして、その中の不一致

アーカイブ内の二つの分析が、それぞれ独立にサトシ自身の活動時刻を計測しており、その結果は同じ場所に着地しない。

Chain BulletinはBitcoinTalk投稿・SourceForgeコミット・メーリングリストのメール、合計742件を3つの候補タイムゾーンに変換し、GMT(ロンドン)と整合するパターンを見出した。

このアーカイブ自身のコード分析は、2009年10月から2010年12月までのSVNコミット164件を対象に、UTC06:00から12:00の間のコミットがほぼ皆無であることを見出した。この空白は、EST圏またはCST圏、すなわちロンドンより5〜6時間西側と整合する。この同じ164件のコミットは、メッセージの長さ・コミット間隔・diff規模の観点から別の統計分析でも分解されているが、そちらはタイムゾーンを扱っていない。

両者は同じ種類の証拠、つまりサトシ自身の投稿・コミットのタイムスタンプを読んでいながら、重ならないタイムゾーンに行き着く。どちらの分析も他方を裁定していない。この不一致の外側にある三つ目のデータ点もある。未公開だったハル・フィニー宛2009年メールにはUTC+8のヘッダーが残っていたが、カライヴァノフ自身がこれをAnonymousSpeech.comのメールサーバーの設定によるものだとし、サトシ本人の所在地とは切り離した。GMT対EST/CSTの謎に何かを加える証拠ではなく、それを解消する証拠である。

もう一つ、種類の異なる研究がある。ドキュメンタリー『Finding Satoshi』で引用されたアリッサ・ブラックバーンの活動時間帯分析は、太平洋時間の午前6時から午後10時という時間帯を報告したとされる。ただしこの時間帯は、サトシ単体の投稿時刻から導かれたのではなく、ハル・フィニーとレン・サッサマンという2名の合算活動から導かれたものであり、自己言及一覧が独自に得ている一般的な結論(日本のタイムゾーンから外れた時間帯という結論)とも、明示的には照合されていない。これは同じ計測の3票目ではなく、種類が異なる計測である。

研究分析対象データ導かれたタイムゾーン実際に測っているもの
Chain Bulletin(カライヴァノフ、2020年)BitcoinTalk投稿・SourceForgeコミット・メーリングリストのメール742件GMTサトシ自身のタイムスタンプ
このアーカイブ自身のコード分析SVNコミット164件(2009年10月〜2010年12月)EST/CSTサトシ自身のタイムスタンプ
ブラックバーン(『Finding Satoshi』、2026年)2名の候補者の合算オンライン活動PSTフィニーとサッサマンの合算活動であり、サトシ単体ではない

サトシ自身の記録が直接答えられる同じ事柄を測っているのは最初の2行だけであり、その2行が食い違っている。3行目はまったく別の事柄を測っている。

直接比較できる二つの分析が一致しているのは、どちらの分析の主な結論よりも狭い一点、すなわちGMTもEST/CSTも日本と整合するタイムゾーンではないという点だけである。両者が一致していないのは、では記録が具体的にどこを指しているのかという点である。同じ綴りの混在とタイムスタンプの証拠は、匿名性構造の分析の言語層でもより簡潔に扱われている。同じPDFメタデータとタイムゾーンオフセットは、サトシ同定の非対称性分析の材料一覧にも収録されている。

GMTという読みが直接指し示す本アーカイブの候補が一人いる。アダム・バック自身の正体仮説は、この節の言語・時計の分析が実際に一致する綴りのパターンと生粋の英国英語という経歴を、彼自身の候補性の根拠として引いている。その一致が本当に成り立つかどうかは、また別の話である。

5. 実際に日本人である唯一の候補

正体候補の全体像には12人の実名候補が個別に掲載されているが、実際に日本人であるのは金子勇ただ一人である。東京大学の研究者で、「47氏」というハンドルでピアツーピアファイル共有システムWinnyを構築した人物だ。プロフィールの主張がどこかへ向かうとすれば、まずこの唯一の候補で成立しなければならない。

しかし言語のテストを通過しない。金子のWinny公開告知は原文のまま保存されており、「暇なんで」という自嘲的な書き出し、2ちゃんねる文化圏の語「2chネラー」、繰り返し現れる文末の助詞(「わ」「なー」)など、日本語母語話者に特有の深い言語的特徴を持ち、他の投稿でも一貫している。対してビットコインv0.1のソースコードは、その全履歴を通じて識別子・コメント・コミットメッセージのどこにも日本語を一切含まない。バイリンガルの著者が英語だけでコードを書くこと自体は理論上ありうるが、実際に記録が示すのは、プロフィールが予測する組み合わせの逆である。金子が自分自身の声で書いたどの文章にも深い日本語母語の痕跡があり、サトシが書いたどの文章にもその痕跡が一切ない。

言語の論点とは別に、時期の不整合そのものも金子の候補性を弱める。金子はビットコインの開発期からもっとも活発な時期を通じて、上訴の続く刑事事件の被告であり続けた(2006年に一審で有罪、2009年10月に大阪高裁で無罪、検察の上告を2011年12月に最高裁が退けて無罪が確定)。そしてサトシの沈黙後には撤退するのではなく、商業ソフトウェア開発の現場へ再び関わっている。仮説への反証の全体は金子のエントリーに、Winny事件の年表とここで扱った2ちゃんねる告知の全文は金子の伝記にまとめられている。

もう一人、名前が偶然この仮名と一致する候補がいる。ドリアン・ナカモトは日系アメリカ人の技術者で、その本名は文字通りサトシ・ナカモトだった。彼のケースは、名前の一致だけでは著者性について何も証明しないことを最も明快に示す例である。ビットコインの規模に見合うコーディング記録もサイファーパンクとの接点も通貨設計の経歴も無く、一貫して撤回されない明確な否定が残るのみだ。名前の一致は完全だが、それ以外の一致はすべて存在しない。

6. 3つの検証が示すもの

ここで一言の判定を下すなら、「日本人ではなかった」か「やはり日本人だった」のどちらかになる。記録はそのどちらも支持しない。プロフィールは、それを裏付けうる独立した経路のどれからも裏付けられておらず、それに反する経路同士も、代わりに何を主張すべきかで一致していない。英語の語法は日本語母語話者という読みに反し、サトシが数えていたセントは、円で物を買っていた人という読みに反する。二つの直接的なタイムスタンプ分析は、日本以外の二つの異なるタイムゾーンをそれぞれ主張する。実際に日本人である唯一の候補は、彼が適合するために通過しなければならなかった言語のテストで脱落する。これらのどれも特定の代替国籍を証明してはいない。記録は、日本という結論に収束しないのと同じ確からしさで、ロンドンにも米国東海岸にも、他のどこにも収束していない。

「裏付けられていない」ことと「反証された」ことの間にあるこの隔たりこそが、記録が実際に立っている場所である。サトシが自分自身について述べた唯一の一文を裏付けそこなう独立した経路が十分にあり、その一文は、書かれたという事実以上の重みを持たない。同時に、その一文を否定する複数の経路同士が一致するほどの合意もなく、別の一文に置き換えるには至っていない。

この仮名の日本人名という形そのもの、すなわち誰がタイプしていたかとは独立に「サトシ・ナカモト」という名前がなぜ選ばれたのかという論点は、国籍とは別の論点であり、仮名のテクノオリエンタリズム的読解で扱う。

姉妹編にあたるエントリーは、同じ検証を別の未検証の前提、つまり国籍ではなく性別に対して行っており、同じ自己言及一覧と同じ匿名性構造のエントリーを突き合わせている。

プロフィールは一度だけ、誰にも確かめようのない欄で「日本」と言った。それ以来、確かめられるものはすべて沈黙するか、別の方角を指してきた。そして、その別の方角同士も、同じ場所を指してはいない。