ウェルカムメッセージの長い版を書こうと、しばらく前から思っていた。Computers, Freedom, and Privacy会議の前にその機会があったので、書き上げた。資料コーナーで配るために紙で300部刷ったが、3日間が終わってみると、持っていかれたのは二十数部だけで、残りはそのまま残っていた。
というわけで、これが私の本当の宣言だ。前の版から良い一節をすべて抜き出し、さらに書き足した。
楽しんでもらえればうれしい。FTPサイトのrants/ディレクトリにも置いてある。
Eric
サイファーパンク宣言
エリック・ヒューズ
電子時代の開かれた社会にはプライバシーが必要だ。プライバシーは秘匿ではない。私事とは、全世界に知られたくない事柄を指す。一方、秘密とは誰にも知られたくない事柄である。プライバシーとは、自分を選んで世界に明かす力である。
二者が何らかの取引をすれば、双方がそのやり取りを記憶する。どちらも自分の記憶について語ることができる。それを誰が止められるだろうか。禁じる法律を作ることはできる。しかし言論の自由は、プライバシー以上に、開かれた社会の根幹をなす。我々はどんな言論も制限するつもりはない。多くの者が同じ場で語り合えば、誰もが全員に語りかけ、個人や他の当事者についての知識を寄せ集めることができる。電子通信の力はそうした集団での言論を可能にした。我々が望まないからといって、それがなくなることはない。
我々はプライバシーを望む。だから、取引の各当事者が、その取引に直接必要なことだけを知るようにしなければならない。どんな情報も語られうる以上、明かすものはできるだけ少なくしなければならない。ほとんどの場合、個人の身元は重要ではない。店で雑誌を買い、店員に現金を渡すとき、私が誰であるかを知る必要はない。電子メールのプロバイダーにメッセージの送受信を頼むとき、プロバイダーは、私が誰と話しているのか、何を言っているのか、他の人が私に何を言っているのかを知る必要はない。知る必要があるのは、メッセージをどう届けるかと、私がいくら料金を払うかだけだ。取引の仕組みそのものによって身元が明かされてしまうなら、私にプライバシーはない。そのとき私は自分を選んで明かすことができず、常に明かさなければならなくなる。
したがって、開かれた社会のプライバシーには、匿名の取引システムが必要である。これまで、その主なものは現金だった。匿名の取引システムは、秘密の取引システムではない。匿名のシステムは、個人が望むときに、望むときだけ身元を明かせるようにする。これこそがプライバシーの本質である。
開かれた社会のプライバシーには、暗号も必要である。何かを言うとき、私はそれを伝えたい相手にだけ聞いてほしい。私の言葉の内容が世界中に知られるなら、私にプライバシーはない。暗号化するとは、プライバシーを望むと示すことであり、弱い暗号で暗号化するとは、それほどプライバシーを望んでいないと示すことだ。さらに、匿名が既定である場で確かに自分だと示して身元を明かすには、暗号署名が必要になる。
政府や企業、その他の巨大で顔の見えない組織が、善意からプライバシーを与えてくれると期待することはできない。我々について語ることは彼らの利益になり、彼らは語るものと覚悟すべきだ。その言論を止めようとするのは、情報の現実に逆らうことである。情報はただ自由になりたがっているのではない。自由を渇望している。情報は、使える記憶領域いっぱいに広がる。情報は噂の年下の、より強い従兄弟だ。噂より足が速く、目が多く、より多くを知り、より少なく理解する。
プライバシーを持ちたいなら、自分たちで守らなければならない。我々は力を合わせ、匿名の取引を可能にするシステムを作らなければならない。人々は何世紀にもわたって、ささやき、暗闇、封筒、閉じた扉、秘密の握手、そして使者によって、自らのプライバシーを守ってきた。過去の技術では強いプライバシーは実現できなかったが、電子技術ならできる。
我々サイファーパンクは、匿名のシステムを作ることに身を捧げている。我々は、暗号によって、匿名のメール転送システムによって、デジタル署名によって、そして電子マネーによって、自らのプライバシーを守っている。
サイファーパンクはコードを書く。プライバシーを守るためのソフトウェアを誰かが書かねばならず、我々全員が書かなければそれは得られない以上、我々が書く。我々はコードを公開し、仲間のサイファーパンクが習練し戯れられるようにする。我々のコードは世界中、誰でも自由に使える。我々が書くソフトウェアを承認しないとしても、我々はあまり気にしない。ソフトウェアは破壊できず、広く分散したシステムは停止できないことを、我々は知っている。
サイファーパンクは暗号への規制を嘆く。暗号化は本質的に私的な行為だからだ。暗号化という行為は、実際、情報を公共の領域から取り除く。暗号を禁じる法律でさえ、その力が及ぶのは国境まで、そして国家が暴力を振るえる範囲までである。暗号は必然的に地球全体へ広がり、それとともに、暗号が可能にする匿名の取引システムも広がる。
プライバシーが広く行き渡るには、それが社会契約の一部でなければならない。人々は集まり、共通の利益のためにこうしたシステムを配備しなければならない。プライバシーは、社会の仲間たちの協力が及ぶところまでしか広がらない。我々サイファーパンクは、あなたの疑問や懸念を歓迎し、あなたと関わることで自らを欺かずにいたいと願っている。ただし、我々の目標に同意しない人がいるからといって、我々が進路を変えることはない。
サイファーパンクは、ネットワークをプライバシーにとってより安全なものにするため、積極的に取り組んでいる。共に、速やかに前へ進もう。
前進あるのみ。
Eric Hughes
<hughes@soda.berkeley.edu>
1993年3月9日

