現代世界では、かなり控えめな閾値を超える追跡不可能な国際金融取引を許可したいと思う主要政府は存在しない。(よく使われる決まり文句は「麻薬マネーの洗浄」「脱税」「テロ組織への資金提供」などだ。)この目的のため、電子金融取引は現在、様々な政府とその機関によって監視されており、最小規模のものを除いて、すべての取引に両端の人間のID要件が課されている。
しかし、100万ノードのボットネット内の各マシンが、世界の反対側にある別のボットネット内のランダムに選ばれたマシンに10セントを送れば、追跡が非常に困難な方法で10万ドルを移動したことになる。私にとっては、これは主要政府がビットコインを現在の形で大規模に運用することを許す可能性が低いことを意味する。
確かにもっともな指摘で、電子現金をめぐる長年の議論でも広く論じられてきたことだ。ビットコインには有利な点がいくつかある。一つは分散していることで、単一障害点がなく、「造幣局」もなく、召喚状を出して逮捕し、閉鎖させられる役員のいる会社もない。P2Pネットワークに近いもので、私たちが見てきたとおり、少なくとも政府からある程度嫌われていても、P2Pネットワークは今も残っている。
ビットコインは、使い捨ての鍵ではなく個人に結びついた送金で、もっと匿名性の低い形で運用することも考えられる。それでも、大規模で分散型の電子決済システムがあるのは役に立つだろう。
また、ビットコインをリファクタリング・再構築して、核心的な新しいアイデアである、分散型のグローバルで不可逆なトランザクションデータベースを分離することも可能かもしれないね。そのような機能は他の目的にも有用だろう。一度それが存在すれば、それを使って金銭の移転を記録することは一種の副次的効果となり、閉鎖するのがより困難になるんじゃないかな。
ジョナサン・ソーンバーグまた、ビットコインが広く普及した場合に悪意ある人々が悪用できる他の「国内的な」方法についても懸念している:
- スパマーのボットネットは送信ごとの支払いメールフィルターを簡単に突破できる(いつも通り、コストはボットネット管理者やスパマー以外の人々に降りかかる)。
- ボットネット内の各マシンが管理者に1セントを送れば、それは相当な金額になり得る。言い換えれば、ビットコインはボットネットの管理や関連するマルウェア産業をさらに利益率の高いものにするだろう。
ビットコインのプルーフ・オブ・ワーク(POW)の側面は、主に過去のトランザクションのデータベースの健全さを保証することに向けられている、と理解しておくことが大事なんだ。ビットコインのデータブロックはそれぞれ一連のトランザクションを記録し、ハッシュの衝突を含んでいる。後に続くデータブロックは、それぞれ自分のトランザクションと自分の衝突を持ち、それ以前のすべてのハッシュにもつながっている。その結果、あるブロックが十分な数の新しいブロックの下に「埋もれ」れば、古いトランザクションを覆せないことは、ほぼ確実になる(脅威モデル、つまり攻撃者は正規のノード運営者の計算力のX%を超える計算力を集められない、という前提のもとで)。
新しいコインを作ることも、今は確かにPOWで行われているけれど、それは一時的な便法と見なされていると思うし、実際、今のソフトウェアは数年かけてそれを段階的になくしていく。だから、ボットネットが大量のPOWトークンを作り出せるという心配は、ビットコインに関しては一時的な懸念にすぎないんだ。
ボットネットの脅威を踏まえて、POWトークンをスパム対策に使うことについては、過去にも何度か議論があった。参考文献はWikipediaの「Proof-of-work system」から辿れる。分析の結果は、前提とシステムの設計次第で、まちまちだった。
もしPOWトークンが本当に役に立つようになり、とりわけ貨幣になったら、マシンが遊んだままになることはなくなる。ユーザーは自分のコンピューターが稼いでくれることを期待するようになる(報酬が運用コストを上回ると仮定して)。ボットネットに稼ぎを盗まれているコンピューターは、今よりも持ち主に気づかれやすくなる。だから、そういう世界では、ユーザーはもっと熱心にコンピューターを手入れし、ボットネットの感染を取り除くようになると予想できるだろう。
ボットネットの運営者の対抗策としては、取り分を控えめにして、乗っ取ったコンピューターの生産能力の10%だけを盗むようにし、持ち主に気づかれにくくすることが考えられる。こういう考えはすぐに当てにならない推測に落ちていくけれど、POWトークンに価値がある世界のあらゆる影響を分析することの難しさを示しているね。
ハル・フィニー
