ビットコイン・インスティテュート

ビットゴールド​(ニック・サボ、​Unenumerated、​2005年12月)

人物: ニック・サボ

ずっと以前、私はビットゴールドの考えを思いついた。問題を一言で言えば、私たちの貨幣はいま、その価値を第三者への信頼 (http://szabo.best.vwh.net/ttps.html)に頼っている、ということだ。20世紀のインフレやハイパーインフレの数々が示したとおり、これは望ましい状態ではない。同じように、民間の銀行券の発行 (http://unenumerated.blogspot.com/2005/11/flying-money-brief-overview.html)も、さまざまな長所と短所があったとはいえ、やはり信頼できる第三者に頼っていた。

貴金属や収集品 (http://szabo.best.vwh.net/shell.html)には、作るのに費用がかかるために、偽造できない希少性がある。これはかつて、どの信頼できる第三者からもおおむね独立した価値を持つ貨幣をもたらした。だが、貴金属には問題がある。ふだんの取引のたびに金属の品位を何度も確かめるのは、費用がかかりすぎる。そこで、信頼できる第三者(たいていは、その硬貨を支払いとして受け取る徴税人と結びついていた)が呼び出され、決まった量の金属に刻印して硬貨にした。大きな価値の金属を運ぶのは、かなり危ない仕事になりうる。第一次世界大戦中、英国が金本位制を支えるため、Uボートのうようよする大西洋を越えてカナダへ金を運んだときに知ったとおりだ。しかも、金属ではオンラインで払えない。

そこで、信頼できる第三者への依存を最小にしつつ、偽造できない高価なビットをオンラインで作り、同じように最小の信頼で、安全に保管し、移し、品位を確かめられるプロトコルがあれば、とてもいい。ビットゴールドである。

私のビットゴールドの提案は、「クライアント・パズル関数」「プルーフ・オブ・ワーク関数」「安全なベンチマーク関数」 (http://szabo.best.vwh.net/intrapoly.html)などとさまざまに呼ばれる関数を使い、問題のビットの文字列から、ビットの文字列を計算することに基づいている。できたビットの文字列が、プルーフ・オブ・ワークである。一方向関数 (http://en.wikipedia.org/wiki/One_way_function)が逆向きに計算するのが法外に難しいのに対し、安全なベンチマーク関数は、理想的には、逆向きに計算するための決まった費用を、計算の回数で測って伴う。

私が思い描くビットゴールドの仕組みの主な手順は、次のとおりだ。

(1) 公開のビットの文字列、「問題の文字列」を作る(手順5を見よ)。

(2) アリスは自分のコンピューターで、ベンチマーク関数を使い、問題のビットからプルーフ・オブ・ワークの文字列を生成する。

(3) プルーフ・オブ・ワークに、安全に時刻の証明を付ける。 (http://www.cs.ut.ee/~lipmaa/crypto/link/timestamping/)これは分散した形で働くべきで、いくつもの別々の時刻証明のサービスを使い、どれか一つのサービスに大きく頼らなくて済むようにする。

(4) アリスは、問題の文字列と、時刻の証明を付けたプルーフ・オブ・ワークの文字列を、ビットゴールドの分散した財産権原の登記簿 (http://szabo.best.vwh.net/securetitle.html)に加える。ここでも、登記簿を正しく運用することについて、どれか一つのサーバーに大きく頼ることはしない。

(5) いちばん新しく作られたビットゴールドの文字列が、次に作られる文字列の問題のビットになる。

(6) アリスがあるビットゴールドの文字列の持ち主であることを確かめるには、ボブは、ビットゴールドの権原の登記簿にある、偽造できない権原の連鎖を調べる。

(7) あるビットゴールドの文字列の値打ちを確かめるには、ボブは、問題のビット、プルーフ・オブ・ワークの文字列、時刻の証明を調べて検証する。

アリスが自分のビットゴールドを支配しているのは、そのビットを彼女だけが持っているからではなく、登記簿の中の偽造できない権原の連鎖(デジタル署名の連鎖)の先頭にいるからだということに注意してほしい。

これはすべて、ソフトウェアで自動化できる。この仕組みの安全の主な限界は、手順(3)と(4)で信頼をどれだけうまく分散できるかと、あとで述べる計算機の構造の問題である。

ハル・フィニーは、RPOW(再利用可能なプルーフ・オブ・ワーク)というビットゴールドの変種 (http://rpow.net/)を実装している。これは、「鋳造所」のコンピューターのコードを公開することに頼る。鋳造所は、離れた場所にある、改ざんの跡が残るコンピューターの上で動く。ビットゴールドの買い手は、フィニーが透明なサーバー (http://rpow.net/security.html)の技法と呼ぶ遠隔の認証を使って、決まった回数の計算が実際に行われたことを確かめられる。

こうした仕組みすべての主な問題は、プルーフ・オブ・ワークの仕組みが、抽象的な「計算の回数」に基づく抽象的な数学だけでなく、計算機の構造に左右されることだ。(何年か前に、これについてわかりにくく書いたことがある。 (http://szabo.best.vwh.net/intrapoly.html))したがって、(何桁も)とても安く作る者になり、ビットゴールドで市場をあふれさせることができるかもしれない。だが、ビットゴールドには時刻の証明が付いているので、作られた時刻と、仕事の数学的な難易度を、自動的に証明できる。そこから、その時期に作る費用がいくらだったかを、たいてい推し量れる。

一つ一つが同じ値打ちの金の原子とは違い、収集品と同じように、ある時期にたくさん出回れば、その時期の品の値打ちは下がる。この点で「ビットゴールド」は、金よりも収集品のようにふるまう。だが、この事後の市場と、最初の値打ちを決める競売とが噛み合えば、最適化した計算機の構造を発明して使う「ビットゴールドのマイナー」に、きわめて大きな利益をもたらすかもしれない。

したがって、ビットゴールドは、たとえば文字列の長さのような単純な関数では、互いに同じ値打ちにはならない。代わりに、同じ値打ちの単位を作るには、商人が、値打ちの違うビットゴールドの切れ端を組み合わせ、おおよそ同じ値打ちのより大きな単位にしなければならない。これは、商品の市場を成り立たせるために、多くの商品の商人がいまやっていることに似ている。それでも信頼は分散している。そうした束の見積もりの値打ちを、ほかの多くの者が、おおむね、あるいは完全に自動で、独立に確かめられるからだ。

まとめると、人類がこれまで使ってきた貨幣はすべて、何らかの形で安全ではなかった。この安全でなさは、偽造から盗みまで、さまざまな形で現れてきたが、最も有害なのはおそらくインフレだった。ビットゴールドは、こうした危険に対して前例のない安全を備えた貨幣を、私たちにもたらすかもしれない。計算機の構造の隠れた革新による、最初は隠れた供給のだぶつきの可能性は、ビットゴールドの潜在的な欠陥、あるいは少なくとも、ビットゴールドの最初の競売と事後の取引所が対処しなければならない不完全さである。

原典の外部ソース

https://unenumerated.blogspot.com/2005/12/bit-gold.html
サボのブログ記事「Bit gold」。2007年のインターネット・アーカイブの保存では、この2005年12月のアドレスで、2005年12月29日(木)の日付が付いている。いまのページは、代わりに2008年12月27日と表示する。記事の下の最初のコメントは、2005年12月29日22:16 UTC(showCommentのリンク)。記事そのものの時刻の記録はないので、00:00 UTCとした。本文とリンクはいまのページのとおり。