2023年2月:歴史を書き換えるのは本意ではないので、この記事は残しておく。だが、これを書いてからの7年のあいだに多くのことがあり、クレイグ・ライトをあれほど信用したのは間違いだったと今はわかっている。「サトシは誰か(あるいは誰ではないか)」というゲームに引き込まれたことを悔やんでいるし、このゲームにはもう加わらない。
クレイグ・スティーブン・ライトこそがビットコインを発明した人物だと、私は信じている。
2週間ほど前、私はライト博士に会うため、飛行機でロンドンへ招かれた。その前に交わしたメールのやり取りで、彼が2010年から2011年初めにかけて私がやり取りした人物と同じである可能性はかなり高いと確信していたからだ。彼と時間を過ごした今、合理的な疑いの余地なく確信している。クレイグ・ライトはサトシだ。
その時間の一部は、サトシしか持っていないはずの鍵で署名されたメッセージを、暗号学的に慎重に検証することに充てた。だが、改ざんのしようがないまっさらなコンピューターで鍵による署名とその検証を目にする前から、自分はビットコインの父の隣に座っているのだと、私はかなり確信していた。
会っているあいだ、私が目にしたのは、才気にあふれ、自分の意見をはっきり持ち、集中力があり、気前がよく、そしてプライバシーを重んじる人物だった。6年前に一緒に仕事をしたサトシそのものだった。彼は多くの謎も解いてくれた。なぜあの時期に姿を消したのか、2011年以来何に打ち込んできたのか。だが、ライト博士のプライバシーは尊重し、その話をどこまで世界に明かすかは本人に任せたい。
私たちは英雄を作るのが好きだ。だが同時に、英雄が手の届かない理想に届かないと、その英雄を憎むのも好きなようだ。サトシ・ナカモトがNSAの計画のコードネームだったり、私たちの原始的なお金を進歩させるために未来から送り込まれた人工知能だったりすれば、そのほうがよかったのだろう。だが彼はそうではない。私たちと同じ、不完全な一人の人間だ。彼の告白が巻き起こす嵐をなるべく気にせず、好きなこと、つまり学び、研究し、新しいものを生み出すことを続けてくれるよう願っている。
彼と握手し、ビットコインを世界に贈ってくれたことに礼を言えたと言えるのが、とてもうれしい。


