ジョン・ギルモアの投稿(2009年1月25日22:40 UTC)いちばん要らないのは、電子メールやスパムを通すための少しばかりのビットバックスを作るために、使える計算資源をすべて燃やし、電気を食い、二酸化炭素を出すように設計された仕組みを、インターネット中に配ることだ。
この問題の技術的な行き着く先を考えてみるのは面白い。地球規模のプルーフ・オブ・ワークの仕組みは、本質的にかなりのエネルギーを消費するのだろうか? それとも、そういう仕組みでもほどほどのエネルギー消費で済むような計算のやり方があるのだろうか?……
[原理的にはエネルギーを消費しない、可逆な計算を使う提案は省略。]
ここで話されている問題には、コンピューター科学の部分と経済の部分のあいだに矛盾がある。デジタルのコインに価値を与えるのは、まさに、それを作るのに現実の世界での何らかの出費がかかることだ。私たちは「プルーフ・オブ・ワーク」と言うが、実際には、コンピューターがする「仕事」は、それ自体では何の価値もない。価値が出るのは、それがほかのことに使えたかもしれない限られた資源であるときだけだ。つまり、計算に回せる余った計算資源の価値は、それにかかる機会費用から来る。そうでなければ、誰でも、自分は何の費用も負わずに好きなだけ作れてしまう。実際、ボットの飼い主が他人のマシンを使う費用の構造の裏にあるのも、これだ。だが結局、それがボットの飼い主にとってうまくいくのは、マシンの持ち主にとっても大きな損失がないからにすぎない!
ここで、抽象的な「仕事」の考えではなく、計算をするのに散逸させなければならない電力にあたるものに基づくアルゴリズムを使えば、デジタルのトークンの価値は本当に現実の世界に根ざすことになる。余った計算資源は、もう「ただ」ではなくなる。電気代の請求書に現れるからだ。もちろん、ボットの飼い主は払わなくていい。だが、「乗っ取られた」マシンの持ち主が本物の費用を目にすれば、何か手を打つ動機が生まれる(今は基本的に、その動機がない)。
電力の費用をなくしてしまうと、計算をするCPUとメモリーの固定費を償却する話に戻ってしまう。その費用は下がり続けている。そのやり方で、経済的に成り立つ仕組みにどうたどり着けるのか、私には分からない。
では、トークンの費用を電力にどう結びつけるのか? 不思議なことに、そういうものはすでに提案されている。CPUはどんどん速く、どんどん並列になっているが、メモリーは途方もなく大きくなっていても、それほど速くはなっていない、という指摘がある(残念ながら出典は手元にない)。そこで、私が読んだ論文が提案していたのは、CPUの秒数ではなく、メモリーの読み書きで高くつくハッシュ関数だ。メモリーへの書き込みは本質的に不可逆なので、本質的に電力を食う。メモリーへの書き込みの多いアルゴリズムは、電力を使うアルゴリズムでもある。
(ちなみに、何年か前、ベンチャーキャピタリストの友人が、人々のセットトップボックス(かなり強力なチップが入っている)の余った計算資源を買い取り、それで組んだ「分散計算サーバー」を貸し出すという案を、私に持ちかけてきた。人々には、箱を使う代わりにほとんど何も払わなくていい、箱がほかに使われていないときだけ動かすので、ごくわずかな支払いでも喜ぶはずだ、というのが言い分だった。私は、彼らが見落としていた費用を指摘した。電力の使用が増えることだ。たしかに、個人は気づかないだろう。だが、いずれどこかの消費者団体が気づく。その悪評で事業はつぶれる。その分を箱の持ち主に払う額に加えて少し計算してみたら、事業全体が、純粋に経済の点から見て、あまり面白くなくなってきた。ほかにも問題はたくさんあったのだが。)
— ジェリー