
2021年12月24日、ビットコインが5万1000ドルあたりにあった日に、PlanBは「はっきりさせておく」で始まる投稿をした。その中で、自分のモデルに前に課した基準を自分で引いている。
PlanB(ツイート、2021年12月24日15:08 UTC)
- 12月100Kの外れ:私は以前、2021年12月にBTCが10万ドル未満なら、S2Fは「脱線した」「無効になった」「死んだ」と言った。正直に言えば、あれは「このサイクルの平均10万ドル」と回帰分析を説明しようとして、まずい言い方をしたものだ。S2Fモデルは健在だ。
18秒後、それに代わる基準を投稿した。
PlanB(ツイート、2021年12月24日15:09 UTC)BTCがこの先2.5年、1sdの帯の中にとどまれば、S2Fモデルは今も有効で、私にとって実際に役に立つ。
一つ目の基準には月と数字があった。二つ目には、幅15万ドルほどの帯と30か月の期間がある。同じモデルに、18秒の間を置いて、外れ方の違う二つの基準が付いた。ビットコインの価格のモデルには、作った人が書いたかどうかに関わらず、こうした基準が付いて回る。そして基準の形は一つではない。期限の付いた目標は、その日に測る。回廊は、それが覆う年月で測る。到達の予定表の付いた曲線は、表にある日に測る。だから、どのモデルでも最初に読むのは、作った本人の言葉で書かれた約束である。記録にある約束と、のちにその名で出回った約束が食い違う箇所が、一つではない。
1. 価格に引いた曲線(2014〜2019年)
一番古いのは一枚の絵である。2014年8月24日、Redditの利用者azopがr/Bitcoinに「Bitcoin price with over/under-valued bands」を投稿した。価格の対数に一本の当てはめの直線を引き、その両側に同じ幅の色の帯を並べた図だ。コメントで本人は傾きを、1日平均およそ0.59%の上昇と書き、帯の幅は「基本的に恣意的」だと書いた。対数の図の直線は、一定の率で伸び続ける指数の伸びを意味する。本人は図を売り込まなかった。
azop(r/Bitcoinのコメント、2014年8月)今この1枚の図が(ほぼ)買えと言っているからといって、それだけでビットコインを買わないこと。
2か月後の2014年10月22日、TrolololoがBitcoinTalkに「Logarithmic (non-linear) regression - Bitcoin estimated value」というスレッドを立てた。ビットコインは381ドルだった。Excelで作った10月14日付けの図は、直線を曲げている。価格の常用対数が、2009年1月9日からの日数の自然対数に比例して伸びるので、曲線は上がり続けながら、だんだん寝ていく。式は図の下の計算のリンクにあり、10^(2.9065 × ln(日数) − 19.493)。その下の小さな表が、曲線が10倍ごとの値を越える日を並べていた。1,000ドルは2015年4月24日、1万ドルは2017年11月22日、10万ドルは2021年7月16日、100万ドルは2026年9月6日。2075年にはいくらになるかと聞かれ、本人は、このページのどのモデルにも当てはまる断りで答えた。
Trolololo(BitcoinTalkへの投稿、2014年10月23日00:33 UTC)この対数回帰は、線形回帰よりずっとよい。だが、ただのモデルで、水晶玉ではない。
本人はのちに、スレッドの最初の投稿を、最新の図だけを載せる形に書き換えた。2014年の版は、スレッドの4番目の投稿と、式と2021年7月の日付が描き込まれた図そのものと、本人が一度も書き換えなかった翌朝の投稿に残っている。
「パワーロー」の名は、Redditから入ってきた。2018年9月3日、u/Econophysicist1が「Bitcoin power law, over 10 year period, all the way to Genesis Block.」を投稿した。このアカウントの自己紹介はアルゴリズム取引の会社QuantonomyのCEOで、その会社のサイトはCEOをジョバンニ・サントスタシとしている。1年後の2019年9月4日、ハロルド・クリストファー・バーガーがMediumに「Bitcoin’s natural long-term power-law corridor of growth」を書いた。バーガーはそのRedditの投稿を先行する仕事として挙げ、数字を書き残した。価格の常用対数を2009年からの日数の常用対数で回帰して、切片は−17.01593313、傾きは5.84509376。三つの天井を通る上の線の傾きは5.02927337。結論は期間で書いてある。
ハロルド・クリストファー・バーガー(Mediumの記事、2019年9月4日)価格は、早くて2021年、遅くとも2028年に、1ビットコイン10万ドルに届く。2028年のあとは、10万ドルを下回ることはない。
Blockchaincenterのレインボーチャートは、2014年の二つの絵をつないだものだ。作り手はXでRohmeoと名乗り、チャートの来歴の中で、azopを「考案者」とし、自分は「2019年5月19日に、レインボーチャートの最初の動く版をRedditに投稿した(直線として)」と書く。そのあと直線を、Trolololoの曲線に取り替えた。2022年に価格が一番下の帯を割ると、2022年11月21日に第2版を出した。レインボーチャートには、日付が一つもない。線の周りの色の並びで、価格が色の外へ出ると、色のほうが描き直された。
2. 期限を書いたモデル
PlanBのストック・フロー比のモデルは、2019年3月22日の「Modeling Bitcoin’s Value with Scarcity」で世に出た。出発点は一つの比で、すでにあるコインの量を、1年に掘られる量で割る。この比は半減期ごとに跳ね上がる。PlanBは2009年12月から2019年2月までの月ごとの111点に当てはめ、式をln(時価総額) = 3.3 × ln(SF) + 14.6と書いた。これは時価総額の式で、1コインの価格の式ではない。価格の式は「係数が違う」とだけ書き、係数は載せていない。予測には期間が付いていた。「おそらく半減期の1〜2年後、2020年か2021年に分かる」。
PlanB(Mediumの記事、2019年3月22日)2020年5月の半減期のあとのビットコインの予測時価総額は1兆ドルで、ビットコインの価格にすると5万5000ドルになる
その日のビットコインは3,984ドル。初めて5万5000ドルを超えて引けたのは、2021年2月19日だった。自分で決めた条件で測れば、2019年の予測は期間の中に着いている。1年後の2020年4月27日、PlanBはモデルから時間を外した。「Bitcoin Stock-to-Flow Cross Asset Model」は、ビットコインの四つの段に銀と金を足した六つの点で回帰し、2020〜2024年の段を時価総額5.5兆ドル、価格28万8000ドルとした。本人がこれを「まだ他人による再現も検証も受けていない最初の一歩」と断っている。2020年と2024年の半減期のあいだの日ごとの最高値は、2024年3月13日の7万3082ドルだった。
そして2021年6月20日、ビットコインが3万4000ドルを割った日に、PlanBはその年の残りの月ごとの数字を投稿し、それを自分の「最悪の筋書き」と呼んだ。添えた図の題は「Bitcoin S2F Model - Worst Case Scenario 2021」。5か月後、同じ数字に別の名前が付いた。
PlanB(ツイート、2021年11月25日12:38 UTC)フロアモデルの11月終値9万8000ドルは、おそらく初めての外れになる(8月、9月、10月を的中させたあとで)。S2Fモデルは影響を受けておらず、実際に10万ドルへ向けて順調だ。
| 月(2021年) | 6月20日にPlanBが書いた下限 | 月末の価格 |
|---|---|---|
| 8月 | 4万7000ドル超 | 4万7219ドル |
| 9月 | 4万3000ドル超 | 4万3781ドル |
| 10月 | 6万3000ドル超 | 6万1432ドル |
| 11月 | 9万8000ドル超 | 5万7097ドル |
| 12月 | 13万5000ドル超 | 4万6355ドル |
月末の価格は、CoinMetricsの各月の最終日の参照価格。10月は下限に1,568ドル足りなかったのに、PlanBはこれも的中に数えている。でも、それは小さなことだ。この表で目を引くのは、名前の移り方である。6月、この数字はS2Fの名を冠した図の最悪の筋書きだった。11月にはフロアモデルのものになり、その外れでS2Fは「影響を受けて」いないことになった。12月24日、フロアモデルは失敗と宣言され、10万ドルの基準は取り下げられ、S2Fには2年半とどまるべき帯が与えられた。翌日、PlanBは「3年間1標準偏差の帯の中にとどまってきたモデルを、失敗したと考えるとは」と書いた。
PlanBの決めた期間は2024年6月までだった。その半年目の2022年6月18日、ビットコインの参照価格は1万9014ドルで、12月に本人が「おおよそ5万〜20万ドル」と書いた帯を大きく下に外れていた。2日後、PlanBは2019年の元のモデルと、新しく当て直した線を並べて投稿した。
PlanB(ツイート、2022年6月20日16:56 UTC)S2Fモデルは2019年3月(BTC 4K)から2022年3月(BTC 45K)まで、たしかにうまくいった。今のところ:BTCがきわめて割安で近く反発するか、S2Fが今後あまり役に立たなくなるかのどちらかだ
このページで、決まった日に価格を置いた約束は二つしかない。Trolololoの表と、PlanBの投稿だ。外れが目に見えるのはこの二つで、その日が来たときに書き換えられたのはPlanBのほうだった。外れたあとで動かした基準は、もうモデルを測っていない。12月24日から先、S2Fは日付で外れることがなくなった。価格が帯からも外れたとき、PlanBが選んだ言葉は「間違っていた」ではなく「あまり役に立たなくなる」だった。
3. ネットワークの大きさで測る
時間に対して価格を描くモデルばかりではない。2014年3月30日、u/gsantostasiがr/Bitcoinに「Bitcoin compared with Metcalfe’s and Zipf’s law」を投稿した。コメントで本人は、アドレスの数をロジスティック曲線に当てはめ、価格を利用者の数で、どちらも対数で回帰し、指数1.45のべき乗を出した。メトカーフの法則の2乗と、ジップの法則のあいだの値である。何をしていないかも、はっきり書いている。「価格を時間の関数にして何かを予測してはいないことに注意してほしい」。
ケイン・アイランド・オルタナティブ・アドバイザーズのティモシー・ピーターソンは、同じ考えを学術誌へ持ち込んだ。「Metcalfe’s Law as a Model for Bitcoin’s Value」は2017年12月2日にSSRNに載り、2018年第2四半期のAlternative Investment Analyst Reviewに出た。価値を利用者の数の2乗に比例させ、新しいコインの発行をゴンペルツ曲線で表し、その当てはめで2013〜2014年の価格操作の主張を確かめている。要旨には、日付も価格も書いていない。
Redditの投稿から10年後、サントスタシは二つの種類を一本にまとめた。2024年3月20日にMediumに書いた「The Bitcoin Power Law Theory」は、利用者が時間の3乗で増え、価格がおよそ利用者の2乗で伸びるので、価格は時間の6乗で伸びると論じる。当てはめの係数は書いていない。その代わりに、100万ドルまでおよそ10年という見通しと、「せいぜい2040年より先の予測には使うべきでない」という限りを置く。S2Fについては「基本的に、ばかげている」と書き、その土台の考えについてはこう書く。
ジョバンニ・サントスタシ(Mediumのエッセイ、2024年3月20日)この理論で、希少性はまったく何の役も果たさない
三つ目の系統は、掘るのにかかる費用からコインの値を出す。この考えはこのページのどの図より古く、2009年10月の最初の為替レートから2020年代のマイニングコストの研究までの記録は、ビットコインの価格と生産コストの分析がたどっている。
4. モデルの種類ごとに何で測れるか
| モデル | 作った人と日 | 約束の形 | 元の式 | 本人が書いたこと | 日ごとの価格で測ると |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格の対数の帯 | azop、2014-08-24 | 日付のない回廊 | 直線、1日およそ0.59% | 日付も価格もない | 測るものがない |
| 対数回帰 | Trolololo、2014-10-22 | 到達の日付付きの曲線 | 10^(2.9065 ln d − 19.493)、dは2009-01-09からの日数 | 10万ドルは2021-07-16、100万ドルは2026-09-06 | 2021-07-16は3万1456ドル、2026-09-06は8万320ドル |
| ストック・フロー比 | PlanB、2019-03-22 | 期限付きの目標(時価総額) | ln(時価総額) = 3.3 ln(SF) + 14.6 | 2020年5月の半減期のあとに5万5000ドル、「2020年か2021年」 | 初めて5万5000ドルを超えたのは2021-02-19 |
| べき乗の回廊 | バーガー、2019-09-04 | 期間付きの回廊 | log10 P = −17.01593313 + 5.84509376 log10 d | 10万ドルは早くて2021年、遅くとも2028年 | 初めて10万ドルを超えたのは2024-12-08 |
| S2FX | PlanB、2020-04-27 | 段ごとの目標 | 時価総額 = exp(12.7598) × SF^4.1167 | 2020〜2024年に28万8000ドル | 最高は2024-03-13の7万3082ドル |
| 最悪の筋書き(のちのフロアモデル) | PlanB、2021-06-20 | 月ごとの下限 | 公表していない | 8月4万7000ドル超〜12月13万5000ドル超 | 5か月のうち2か月が上回った |
| 1標準偏差の帯 | PlanB、2021-12-24 | 期間付きの帯 | 2021年12月におおよそ5万〜20万ドル | 2024年6月まで帯にとどまる | 2022-06-18は1万9014ドル |
| パワーローの理論 | サントスタシ、2024-03-20 | 見通し | 価格は時間の6乗、係数なし | 100万ドルまでおよそ10年 | まだ測れない |
この中で一番測りやすいのは、Trolololoの表だ。日付が四つ書いてある。
| 価格 | Trolololoの日付 | その日の価格 | 初めてその価格以上で引けた日 |
|---|---|---|---|
| 1,000ドル | 2015-04-24 | 231ドル | 2017-01-02 |
| 1万ドル | 2017-11-22 | 8,250ドル | 2017-12-01 |
| 10万ドル | 2021-07-16 | 3万1456ドル | 2024-12-08 |
| 100万ドル | 2026-09-06 | 8万320ドル | まだ |
2014年に引いた曲線は、四つの日付のうち一つに9日差で届き、そのあとは桁が上がるごとに大きく外れた。5年あとに、同じ価格の歴史を長く使って引いたバーガーの回廊は、10万ドルを8年の幅に置き、価格は4年目に届いた。それだけ幅があれば、着くのはたやすい。幅というのはそのためのもので、その分だけ言えることが減る。もう一つの文、2028年のあとは10万ドルを下回らない、はまだ測れない。2024年12月8日から今まで、10万ドルを下回って引けた日は465日あり、一番新しいのは2026年10月21日の8万4176ドルだ。
5. 誰の式か
式は、作った人を置いて出回る。レインボーチャートは帯の考案者をazopとし、Trolololoの式をy=2.9065ln(x)-19.493と書く。サントスタシの2024年の論考には、係数が一つもない。それなのに、チャートのサイトbitboの日本語のページ「ビットコイン長期パワーロー」は、2009年1月3日を起点にA = 10^-17.016、n = 5.845とし、バーガーの二つの結論(10万ドルは2021〜2028年、100万ドルは2028〜2037年)をほぼそのまま載せて、考案者をサントスタシとだけ書く。バーガーの名はない。バーガー自身の記事は、自分より先にあったRedditの投稿を名指ししている。数字を書き残した本人は出どころを挙げ、その出どころのほうに数字が渡った。
2026年9月6日、Trolololoの2014年の表が100万ドルに置いた日、ビットコインは8万320ドルで引けた。本人は、言ったとおり、とうに曲線を計算し直している。2017年版の最初の投稿のリンクは、定数の違う式だ。それでも2014年の表はスレッドに残っていて、数字の下に日付がある。本人に何のつもりだったかを聞かなくても、誰でもその日に照らせる。その表は外れた。私は、12月が来たとたんに帯の中で待つように言われたモデルより、この表を信じる。予測に値打ちがあるのは、外れることができる日だけだ。











