
審判のいないゲームが公正であり続けるには、ルール自体が自動的に守られる仕組みが要る。破ることが不可能か、破っても意味がないかのどちらかでなければならず、単に「よくないこと」とされているだけでは足りない。ビットコインには審判がいない。頼れる会社も、委員会も、単一のサーバーもない。では、マイナーが自分に大金を発行したり、他人の送金を取り消したりするのを、実際には何が防いでいるのか。
ルール 1: 全員が検証する
マイナーだけでなく、すべてのノードが、新しいブロックが発表された瞬間にそれぞれ独立に検証する。すべての署名は本物か。使われた各レシートは、本当にそれまで未使用だったものか。ブロックの指紋は、前のページで説明したくじに実際に当たっているか。マイナー自身への支払いはスケジュールどおりか。
無効なトランザクションを紛れ込ませようとしたり、自分に本来より多く支払おうとしたりしたマイナーは、こっそり成功するわけではない。単に、ネットワーク上の他の全ノードが自分の写しへの追加を拒否するブロックを作ってしまうだけだ。不正なブロックは、誰かにハッキングされたり、権威によってブロックされたりするのではない。ただ無視されるだけだ。偽造されたチケットが、どれほど本物らしく見えても入口では使えないのと同じで、入口の係員が実物の記録と照合しているからにほかならない。
ルール 2: 最も労力のかかったチェーンが勝つ
ときどき、2 人のマイナーがほぼ同時にくじに当たり、ネットワークには一時的に 2 つの異なる「次のページ」候補が現れる。議論して決着をつける必要はない。くじに勝つために注ぎ込まれた総労力がより多いほうの枝(たいていはさらにもう 1 つブロックが先に積まれたほう)が、そのまま全員が採用するチェーンになり、もう一方は静かに捨てられる。
この 2 番目のルールこそが、古い履歴の書き換えを、単に難しいのではなく、根本的に望みのない試みにする。誰かが 100 ブロック前の送金をこっそり取り消そうとしたとしよう。前のページで見たとおり、その古いブロックを変えれば、それ以降の指紋のつながりがすべて壊れる。つまり攻撃者は、マイニングのくじに 100 回連続で、しかも単独で勝ち、その作業を最初からやり直さなければならない。その間も、世界中の正直なマイナーたちは本物のチェーンをさらに先へ延ばし続けている。攻撃者が握る計算力が他の全員と比べて小さいほど、追いつくだけのために連続で勝たなければならないくじの回数は増え、その見込みは出遅れるほどゼロに近づいていく。地球上の他の全員に迫るほどの計算力を握ること自体、現実にはほぼ不可能なハードルであり、それに届かない限り、本物のチェーンは時間が経つほど追いつくどころかますます遠ざかっていく。(攻撃者の規模ごとの実際の追いつき確率は、コンセンサス設計書が数値まで示している。)
同じ規則が、同じレシートが 2 か所で同時に二重支払いされるのも防ぐ。同一のレシートを消費しようとする矛盾した 2 つの送金は、ネットワーク上の別々の待合室に一時的に同時に存在することもあるが、勝ち残るチェーンに入れるのはどちらか一方だけだ。そうなった瞬間、全ノードはもう一方を、もはや存在しないレシートを使おうとしたものとして拒否する。待つべき仲裁の手続きはない。どちらの枝が競争に勝つかだけで、数分のうちに自然と決着がつく。
ここまでのまとめ
このガイド全 5 本を合わせると、システム全体の姿はこうなる。ビットコインはレシートのようにふるまい、持ち主だけが開けられる錠で守られている。そのレシートはトランザクションを通じて動き、ブロックにまとめられ、それぞれが指紋を持ち、前のブロックに鎖状につながる。新しいブロックは、誰かに割り当てられるのではなく、コストのかかるくじに勝つことで手に入る。送られた送金は席が空くのを待ってから台帳に収まり、その後ブロックが積まれるたびに安全になっていく。そしてシステム全体が誠実であり続けるのは、参加者一人ひとりが自分でルールを検証し、最も多くの労力が注ぎ込まれたチェーンが常に勝つからだ。
そのどれもが、銀行や会社、お互いへの信頼に依存していない。頼っているのは、数学と、全員にとって同じ方向を向くインセンティブだけだ。それが、このガイドの冒頭で立てた問いへの答えになる。




